耳を澄ますわざ。

更新日:2021年5月13日

以前、私は

言葉が過剰に飛び交う世界にいました。

喧騒の中でアピールすることを求められ、

その騒がしさに気づくことさえできずに自分を見失いかけていました。



そんなとき読んだ『Kinship with all life』という本の中に、こんな言葉があったのです。



「 永遠に至るあらゆるわざの中でも

永遠との最短距離にある

  失われたも同然の、耳を澄ますわざ」。



1923年にノーベル文学賞を受賞したアイルランドの詩人イエーツ。

彼が持っていたであろう、

「 失われたも同然の、耳を澄ますわざ 」。

と、その本の中には書かれていました。



おそらくイエーツだけではありません。

言葉を使わずに生きている動物たちは皆、

そのわざを持っているのではないかと思うのです。



私たち人間は言葉とともに生きていますが、

うまく付き合っていくのは至難のわざ。

放っておくと、頭の中にも胸の中にも言葉が溢れ、飲み込まれてしまいます。

未来を憂い、過去に悩み、他人の気持ちを推し量り、自己を正当化し、

言葉とともに生まれた余計な感情に翻弄されていくのです。

その結果、心は空(くう)をさまよい始めてしまう。

永遠どころか、今、ココにさえない。

やがて、どんどん事実から遠ざかり、自分を見失っていくのです。

かつての私も、騒がしい言葉の海で溺れかけ、

それでもなおかつ叫び続けている人間のひとりでした。



そして、息苦しさが限界に近くなってきたある時、

私は、ずっと心の片隅にあった「耳を澄ますわざ」を試してみることにしたのです。

愛犬との散歩の途中。

小さいけれど、きちんと手入れされた緑地。

言葉を忘れ、自己を忘れ、ただ周囲のようすに「耳を澄ませて」みたのです。



それはとても、心の落ち着く体験でした。



空の青は果てしなく、旅客機が遥か上空を音もなく移動していく。

かすかに潮の匂いが混じった心地よい風、それに合わせて踊る木々の影。

背後で鳥が羽ばたいていく。

遠くで子供たちの声がする。

太陽がすべてを柔らかく照らしている・・



意識して耳を澄ますと、他の五感も繊細に動き出していきます。

そして、いつの間にか言葉は消えてなくなり、自己も遠くなっていく。

静かな世界の先に、永遠へと続く道の入口が見えたような気がしました。

一緒にいた愛犬とその時間を共有できたようにも思えました。

いえ、愛犬こそが、

私をその場所に連れてきて「耳を澄ますわざ」を教えてくれたのでした。



『 The world without words 』

このHPのタイトルは、ここからきています。



「永遠に至るあらゆるわざの中でも、

永遠との最短距離にある、

 失われたも同然の、 耳を澄ますわざ」。

 




















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